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海外で受賞・配給された作品・人

世界4大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン、モスクワ)、米アカデミー賞で受賞した作品/人など。
作品に関しては監督名、個人賞に関しては個人名。西暦は受賞年度。
『地獄門』1954
衣笠貞之助監督 京マチ子主演。
カンヌ映画祭グランプリ/アカデミー賞特別賞(外国語映画賞)

『地獄門』1954
和田三造
 
アカデミー賞衣裳デザイン賞(実際の仕事は「色彩指導」というもので衣裳だけではなくセットやカメラワークや現像処理までも含むトータルなものだった)和田は日本人初のアカデミー賞受賞者。映画では溝口健二の『新平家物語』なども手がけている。日本を代表する洋画家であり、日本色彩研究所の創設者で、写真・印刷・環境デザインなどの分野でも活躍した。「大船観音」の設計にも関わっている。
地獄門『小さい逃亡者』1967
衣笠貞之助監督 
モスクワ映画祭児童映画部門金賞

日ソ合作第一回作品で大映が製作にあたり、京マチ子や宇津井健らが出演している。シナリオにはソビエト側からエミール・ブラギンスキー、日本側からは黒澤組の小国英雄、カメラマンは宮川一夫という一流どころが当たり、監督にはソビエト側はエドワールド・ボチャロフが当たった。衣笠は戦前『十字路』1928という傑作を作っており、彼はこのフィルムを持って2年に渡りソ連・ドイツで暮らした。なお『十字路』はヨーロッパ中で公開され高い評価を受けている。
わが映画の青春―日本映画史の一側面 (1977年) (中公新書)
『無法松の一生』1958
稲垣浩監督 
ベネチア映画祭金獅子賞

三船敏郎主演。戦前阪東妻三郎主演で作った同映画(これも大傑作)のセルフリメイク。戦前の作品は検閲のためカットされた部分もあり、また撮影・合成技法上できなかったことがこちらでは思う存分やれた。
『宮本武蔵』1955
稲垣浩監督 
アカデミー賞特別賞(最優秀外国映画)

三船敏郎 (武蔵)&三國連太郎(沢庵)の武蔵シリーズ第一作。原作は吉川英治だが、稲垣らが大きく脚色している。二作目以降登場する佐々木小次郎役は鶴田浩二
『白夫人の妖恋』1956
豊田四郎監督 
ベルリン映画祭色彩撮影特別賞

池部良、山口淑子主演。特技監督・円谷英二、撮影・三浦光雄。当時まだ日本では扱える人が少なかったイーストマンカラーを使った作品で、いろいろ試行錯誤の苦労の末の受賞であった。ビデオソフトが出ていないのは文化的損失ですね→
『からみ合い』1962
小林正樹監督
英国アカデミー賞国連平和賞

南条範夫の同名推理小説の映画化作品で『人間の条件』と同じく稲垣公一と小林正樹がそれぞれ脚色、監督を担当、撮影は『砂の器』などの名カメラマン川又昂。山村聰仲代達矢岸恵子らが出演する社会派サスペンス。音楽は武満徹
からみ合い [VHS]
これもDVD未発売。
サントラの一部は『オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽 』で聴ける。
『切腹』1963
小林正樹監督 
カンヌ映画祭審査員特別賞

仲代達矢が主演。井伊家上屋敷に突然「腹のためにお庭拝借…」とやって来た浪人役。この後ゾクゾクするほど物語が意外な方向に展開する。もちろん小林のこと、封建制の矛盾や武士(支配層)の面子・体裁がいかにバカらしいかを説いていく。三國丹波哲郎、岩下志麻らが共演。音楽はこちらも武満徹


 『切腹』
切腹『人間の條件』1960
小林正樹監督
ベネチア映画祭サンジョルジュ賞、イタリア批評家賞

これぞ大作!俳優陣の名演もさることながら、重厚で深遠なテーマといい、もはやこれを越える映画は日本では作られないのではないだろうか。

 『人間の条件』
人間の條件DVD-BOX
『怪談』1965
小林正樹監督
カンヌ映画祭審査員特別賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

出演者は三國連太郎丹波哲郎仲代達矢岸恵子ら国際派俳優の他、志村喬、杉村春子、新珠三千代ら実力者ばかりのオールスター。撮影、美術、脚本すべてが超一流のホラー。もっと世界で評価されて欲しい一作。もちろん原作は小泉八雲

 『怪談』
怪談『上意討ち 拝領妻始末』1967
小林正樹監督
ベネチア映画祭国際映画批評家連盟賞

 『上意討ち 拝領妻始末』

小林正樹の骨太の社会派ドラマ、鋭い人間観察と的確な歴史観に基づいた重厚な演出力。それは日本映画史上屈指の監督だった。歴史劇、時代劇、ホラーなど、どんなジャンルでも傑作ぞろい。
『黄色いからす』1958
五所平之助監督
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞

五所平之助は日本最初の国産トーキー映画『マダムと女房』の監督。 この作品は淡島千景、久我美子、伊藤雄之助、田中絹代などを配したホームドラマ。
黄色いからす 『煙突の見える場所』1953
五所平之助監督 
ベルリン国際平和賞

東京・北千住のお化け煙突を背景にした市民劇の秀作。
『砂の女』1964
勅使河原宏監督
カンヌ映画祭審査員特別賞
アカデミー賞監督賞、外国語映画賞ノミネート

監督の親友だった安部公房原作。砂の美しさ、脅威、不条理な世界を映像で描き切った。原作を超えたひとつの例だろう。モノクロームの映像がこんなに美しいとは。
勅使河原宏は世界的な生け花の流派・草月流の家元でもあり、絵画、陶芸、書をはじめ芸術全般に傑出した人だった。

 『砂の女』
砂の女 特別版 『利休』1989
勅使河原宏監督 
モントリオール映画祭最優秀芸術貢献賞、ベルリン映画祭フォーラム連盟賞受賞。

衣装デザインはワダエミ。日本の芸術・文化を知り尽くした監督ならではの仕事である。三國連太郎主演。野上彌生子原作、赤瀬川原平が共同脚本。コエリョ役で評論家のドナルド・リチーが出演している。
利休
『西鶴一代女』1952
溝口健二監督 
ベネチア映画祭国際賞、英国BBC「21世紀に残したい映画100本」に選出

全世界の映画人が驚嘆した名画。田中絹代、三船敏郎主演。
 『西鶴一代女』
『山椒大夫』1954
溝口健二監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞

おなじみ森鴎外原作の『安寿と厨子王』の幼い姉弟が人買いに浚われてしまう話であるが、溝口は独特の美意識で映画化。八尋不二、依田義賢による名脚本、名手宮川一夫の撮影、田中絹代をはじめとする演技陣など、日本映画界において最高峰に近いキャスト・スタッフが揃った作品。
山椒大夫
『雨月物語』1953
溝口健二監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞

日本映画が達した芸術的頂点。これらを観なけりゃ日本人じゃない!
ゴダールに好きな映画監督を3人挙げてと聞いたら「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答えた話は有名。京マチ子主演。

 『雨月物語』
『雨月物語』1955
甲斐庄楠音(かいのしょうただおと) 
アカデミー賞白黒衣裳デザイン賞ノミネート

甲斐庄楠音は大正期に活躍した美人画の日本画家。昭和15年、溝口健二と知り合い、映画の時代風俗考証家として活動を始めた。『雨月物語』でも衣装デザイン他、舞台となった時代風俗の監修も行っている。内田吐夢監督の『大菩薩峠』(1957)などにも参加した。
ある映画監督の生涯

溝口健二について関係者が語るドキュメンタリー。田中絹代、入江たか子など貴重なインタビューが満載。新藤兼人監督作品。
『裸の島』1961
新藤兼人監督

モスクワ映画祭グランプリ
孤島での過酷な生活。台詞が一切無く、出演も殿山泰司と乙羽信子ほぼ2人だけという異色作。だが感動もの!監督は「台詞がどれくらい重要か、また台詞がどれだけたくさん映像を殺したか」を熟知した名脚本家でもあるが、「映画はすべて絵であることを主張」をあえて実験したものだという。英国アカデミー賞作品賞ノミネートも。

 『裸の島』
裸の島 『裸の島』
林光
モスクワ映画祭ソ連作曲家同盟賞

新藤監督の『映画つくりの実際(岩波ジュニア新書)』にはこの映画の苦労話が載っている。主演の殿山と乙羽が水がたっぷり入った天秤棒をかついで歩くのに一週間かけて練習したそうだ。簡単そうに見えるが、初めての人は立つのもやっとの重さ。最初はフラフラで、地元の人たちは笑ったそうだが、何日も続けて肩の皮がむけてもひたすら練習をくりかえす役者に次第に恐れの目をむけてきたそうだ。
『裸の十九才』1971
新藤兼人監督
モスクワ映画祭金メダル賞

19歳で4人を殺した連続ピストル殺人犯、永山則夫(獄中で作家になり、後に死刑になった)の生い立ちから犯行を描いた作品。現在明大演劇科などの講師を務める原田大二郎の代表作。
裸の十九才 『生きたい』1999
新藤兼人監督
モスクワ映画祭グランプリ!

2度めの快挙。新藤監督はモスクワと相性抜群!
新藤兼人監督は文化勲章を受賞。
生きたい

三國連太郎、大竹しのぶの演技は至高といえます。
『純愛物語』1958
今井正監督 
ベルリン映画祭監督賞

戦後の荒廃の中、原爆で病に冒され死んで行った少女の純愛と孤児たちの非情な現実を描く社会派ドラマ。
『武士道残酷物語』1963
今井正監督 
ベルリン映画祭金熊賞

脚本は溝口監督の懐刀・依田義賢で、現代からさかのぼって何代にもわたる武士の悲哀と残酷な歴史を綴った大作。忠義の切腹、追い腹、上司への実の娘の献上、男色などドロドロの世界。萬屋錦之介(当時・中村錦之助)が何役も演じた。
武士道残酷物語
『橋のない川・第一部』1969
今井正監督 
モスクワ映画祭ソ連映画人同盟賞

被差別部落に生きる人々の苦闘の歴史を正面から描いた住井すゑの原作を今井監督が映画化した意欲作。今井監督ももっともっと国内外で評価されるべき人。
橋のない川 第一部『真昼の暗黒』1956
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭世界の進歩に最も貢献した映画賞
『戦争と青春』1991 モントリオール世界映画祭エキュメニカル賞などの受賞記録も。
今井正監督は代表作『青い山脈』、『また逢う日まで』の他、、『米』、『キクとイサム』など貧しく、虐げられた人々を描いた映画が多いが、デ=シーカと並ぶ世界の映画人だと思う。
今井正の映画人生
今井正「全仕事」―スクリーンのある人生
『裸の太陽』 1959
家城巳代治監督 仲代達矢出演。
ベルリン映画祭青少年向き映画賞

家城は『激流』以降、『悲しき口笛』、『雲ながるる果てに』、『ともしび』、『路傍の石』など数々の名作で知られ、特に子役を使って「家族の絆」を描かせたら天下一品の監督だった。
エンドマークはつけないで―映画監督の夫と共に 『異母兄弟』1957
家城巳代治監督 
チェコスロバキア映画祭グランプリ。

三國連太郎、田中絹代主演。二人の演技合戦は日本映画史上に残る壮絶さ。三國は役作りのため上下10本の歯を抜いてしまった。
異母兄弟
黒澤明監督

1990年第62回アカデミー賞特別名誉賞(アカデミー賞最高の栄誉)を受賞。

授賞式会場ではハリウッドの監督・俳優陣がスターティング・オベーションで祝福した。受賞の弁で80才の黒澤が「私はまだ映画が分かっていない」と述べた時、爆笑が起こった。大巨匠のユーモアだと思ったからだ。ところが当の本人はごく真剣で「だからもっと映画を作るのだ」と結び、その熱意とバイタリティーに万雷の拍手が贈られた。ユーゴ、フランスなど世界各国からの勲章、受賞は多数。日本・アメリカだけでなく、ロシアを含むヨーロッパ諸国からも絶賛・尊敬されている監督は本当に希有だと思う。

1985年・第58回のアカデミー授賞式では何とビリー・ワイルダー、ジョン・ヒューストンと3人で作品賞のプレゼンテイターを務めた。作品賞をもらったシドニー・ポラック監督は「受賞そのものより敬愛するクロサワに自分の作品(『愛と哀しみの果て』)を呼んでもらったことの方がうれしかった」とコメントしている。

黒澤は日本では文化功労者、文化勲章、国民栄誉賞を受賞している。

蝦蟇の油―自伝のようなもの (同時代ライブラリー)

『生きる』 1953
黒澤明監督 
ベルリン映画祭銀熊賞

 『生きる』

『隠し砦の三悪人』1959
黒澤明監督
ベルリン映画祭銀熊賞

 『隠し砦の三悪人』

『羅生門』1951
黒澤明監督 三船敏郎京マチ子主演。
アカデミー賞特別賞(最優秀外国映画)、同賞白黒美術監督賞ノミネート・セット賞ノミネート、ベネチア金獅子賞(グランプリ)

ベネチアへは日本駐在のイタリア映画輸入配給会社のジュリアーナ・ストラミジョリ女史がこの作品を気に入り、自費で英語字幕を付けて出品したそうだ。受賞当時日本人関係者は誰一人出席していなかった。主催者は仕方がないので町で「日本人に似た人」を探し、授賞式の壇上に上げた。その人は何とベトナム人だったそうだ!この映画が完成した時大映の永田社長は「こんな訳の分らん映画を作りやがって」と激怒し製作した重役たちを左遷までしたそうだが、受賞の知らせを受けると一転して製作したのは自分だと胸を張ったそうだ(黒澤の自伝『蝦蟇の油』より)。ともあれ『羅生門』の受賞が、戦後日本映画が自信を取り戻す大きな励みとなった。永田社長はその後海外の映画祭に積極的に出品し、多くの賞を得た。
その後、『羅生門』は1982年ベネチアの50周年を記念して過去のグランプリの中から最高の作品として「獅子の中の獅子」賞を受賞した。
原作は芥川竜之介の『薮の中』だが、同じ芥川の『羅生門』のイメージを見事に融合させている(共同脚本は橋本忍)。この映画が世界に与えた影響はかなり大きい。西部劇に翻案した映画としてシドニー・ルメット監督は1960年にTVムービー『RASHOMON』を、同じ脚本家(マイケル&フェイ・カニン夫妻)でマ−チン・リット監督は1964年に『 暴行 』を作っている。1991年には『薮の中』を原作にした日米合作『 アイアン・メイズ 』、日本映画では佐藤寿保監督『薮の中』1996、三枝健起監督『MISTY』1997がある。

 『羅生門』

『七人の侍』1955
黒澤明監督 
ベネチア映画祭銀獅子賞
松山祟 アカデミー賞白黒美術賞ノミネート
江崎孝坪 衣裳デザイン(白黒)賞ノミネート

僕にとっては今なおオールタイムベスト1映画。『ラスト・サムライ』の監督は30回見たそうだが、僕はまだ残念ながら17回(2007年9月現在)。だが見るたびに「感心させられる発見」がある。

 『七人の侍』

『影武者』1980
黒澤明監督 
カンヌ映画祭グランプリ
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
村木与四郎 同美術賞ノミネート

 『影武者』

『デルスウザーラ』1975
黒澤明監督
モスクワ映画祭金賞・アカデミー賞外国語映画賞(製作者:松江陽一&ジョルジ・ダネール)

『デルスウザーラ』はれっきとしたソ連映画である。冷戦当時ハリウッドからもソ連からも監督要請があった映画監督はクロサワ以外いないのでは?

 『デルスウザーラ』

『どですかでん』1971
黒澤明監督
モスクワ映画祭全ソ映画労働者同盟特別賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

この映画、黒澤作品の中ではあまり評価が高くないようだが、僕はわりと好きでよく見る。心温まる話とどうにもやりきれない話がごっちゃとなった山本周五郎の原作『季節のない街』(これはこれで大傑作なのだが)を映画向きに非常に優れた脚色がされており、また、どの俳優・女優陣の演技も絶品で、表情、マイム、間合いなど、役者を目指す人にはいいお手本になる。特に圧巻は芥川比呂志と伴淳三郎。

 『どですかでん』

『赤ひげ』1965
黒澤明監督
モスクワ映画祭ソ連映画人同盟賞・ベネチア映画祭サン・ジョルジュ賞、ベネチア市長賞、国際カトリック映画事務局賞

三船敏郎 ベネチア映画祭主演男優賞

 『赤ひげ』

『用心棒』1961
三船敏郎
ベネチア映画祭主演男優賞
村木与四郎 アカデミー賞衣裳デザイン賞(白黒)賞ノミネート。

『用心棒』はイタリアで『荒野の用心棒』、ハリウッドで『ラストマン・スタンディング』にリメイクされた。

 『用心棒』

『乱』1986
黒澤明監督
アカデミー賞監督賞ノミネート
斎藤孝雄、上田正治、中井朝一 同撮影賞ノミネート
村木与四郎、村木忍 美術賞ノミネート

 『乱』

ワダエミ 
アカデミー賞衣裳デザイン賞受賞。


『乱』では何と1,400点にのぼる衣裳デザインを手がけたそうだ。ワダエミはTV『エディプス王』ではエミー賞も受賞している。
若い頃画家を目指していた黒澤は、グリコのシンボルデザイン公募に応募したが残念ながら次点であった。(採用されたのはランナーが万歳しているあれらしい)。もし彼が優勝して採用されていたら今僕らが目にするグリコのデザインはクロサワのものだったかも。だが映画監督クロサワも無く、数々の傑作も無かったかも…。
晩年の映画は、彼がイメージを伝えるために「絵コンテ」といわれる絵を数多く残した。確かにその「表現力」は卓越していた。その絵の権利上の管理は現在あのホリプロが行っている。

『千羽鶴』 1959
吉村公三郎監督 
モスクワ映画祭ソ連平和擁護委員会賞

原作:川端康成 脚本:新藤兼人 撮影:宮川一夫 音楽:伊福部昭という布陣の傑作。
『その夜は忘れない』1963
吉村公三郎監督 
モスクワ映画祭ソ連平和擁護委員会賞

広島に原爆被害の取材に訪れた新聞記者(田宮二郎)と被爆し心身共に蝕まれていたバーのマダム(若尾文子)との出会いと恋を描く社会派メロドラマ。音楽は團伊玖磨
『源氏物語』 1952
杉山公平 
カンヌ映画祭撮影賞

大映の創立十周年記念作で、谷崎潤一郎が監修に当たり、新藤兼人が脚本、吉村公三郎監督、長谷川一夫、京マチ子主演の他、オールスターキャストの超大作。
源氏物語 吉村公三郎監督は『暖流』、『安城家の舞踏会』、『偽れる盛装』など、女性を主人公に映画を撮らせたら世界でも5本の指に入る監督だろう。
『古都』 1964
中村登監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

京都を舞台に、別々に生きて来た双子の姉妹の偶然の出会い、愛、親と子のつながりを描く。岩下志麻が二役を演じた。音楽は武満徹
古都

↑最も美しい頃の岩下志麻!原作は川端康成
『智恵子抄』 1967
中村登監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

高村光太郎の有名な詩集『智恵子抄』と佐藤春夫の『小説智恵子抄』を原作として脚色された作品。丹波哲郎が高村光太郎役、智恵子が岩下志麻。光太郎の親友・椿役に岡田英次。残念ながらビデオ化されていない。この映画の岩下志麻も、もの凄くきれいなのだが…。
『いつか来た道』1959
島耕二監督 
モスクワ映画祭審査員賞

ウィーン少年合唱団の二度目の来日を記念して製作された音楽映画で山本富士子が主演。バイオリニストを目指す視覚障害者の弟を持つ女性とウィーン少年合唱団との暖かな交流を描く。島監督は元二枚目俳優。『次郎物語』『風の又三郎』『細雪』のような名作の映画化、アイドル映画から珍作『宇宙人東京に現わる』までこなした名手。
『白い巨塔』 1967
山本薩夫監督 
モスクワ映画祭銀メダル賞

山崎豊子原作の医学界を舞台にした社会派ドラマで、大ヒット。キネ旬一位など日本映画の賞も総なめした。主演の田宮二郎、小沢栄太郎、加藤嘉は同じ役でテレビドラマにも出演した。監督・山本薩夫ももっと世界で評価されるべき監督だ。
白い巨塔 劇場版
『非行少女』 1963
浦山桐郎監督
モスクワ映画祭金メダル賞

浦山監督は寡作で知られたがどの作品も完成度は高い。浦山は「女優育ての名手」。この作品で和泉雅子が一躍スターになり、国内ではエランドール新人賞を受賞。モスクワ映画祭では審査員を務めた名優ジャン・ギャバンも「この子はすごい」と語ったという。浦山の作品に取組む姿勢と激烈な性格と波乱の人生は田山力哉の『小説 浦山桐郎―夏草の道』に詳しい。
非行少女 『子供の眼』1956
川頭義郎監督
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞

川頭義郎は下記木下恵介の弟子。佐多稲子原作、松山善三が脚色。高峰秀子と高峰三枝子が主演。笠智衆が共演。妻に先立たれた兄(芥川比呂志)と、その子の世話をする妹(高峰秀子)、そして後妻(高峰三枝子)となった女歯科医。子の視線から家族の姿を描く。
これもビデオソフト化されていない。
『永遠の人』 1961
木下恵介監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

阿蘇を舞台に激動の昭和に生きた人々のおよそ30年に渡る愛憎を描く。主演は仲代達矢、高峰秀子、共演は佐田啓二、加藤嘉、乙羽信子ら。まだ高校生だった田村正和の本格デビュー作でもある。
『二十四の瞳』1955
ゴールデングローブ賞外国語映画賞

木下恵介監督作。戦争後に生き残った先生、生徒皆が集まった同窓会、目を失った磯吉が卒業写真を指でたどるシーンは泣けて泣けてたまらない。

 『二十四の瞳』
『太陽とバラ』1955
木下恵介監督
ゴールデングローブ賞外国語映画賞

主演は中村賀津雄、沢村貞子、久我美子、三宅邦子ら。生まれ育った環境ゆえに不良になっていく青年を、社会的な視線で描く。同じ頃流行した『太陽の季節』以来太陽族を神聖化する若者たちに対する批判的な姿勢が明確に示されている作品。
木下恵介監督も日本では大巨匠だが意外に海外での評判はそれほど高くない。もっと世界に向けて作品をアピールすべき。欧米でも通じる傑作が山ほどある。
『陸軍』、『破れ太鼓』、『日本の悲劇』、『カルメン故郷に帰る』、『野菊の如き君なりき』、『楢山節考』などは日本人としても必ず観ておきたい作品。
『天地創造』 1966
黛敏郎 
アカデミー賞作曲賞ノミネート。

ユダヤ人社会のハリウッドが旧約聖書を題材にしたこの映画にユダヤ人作曲家(バーナード・ハーマンとかエルマー・バーンスタイン)とかいくらでもいるのに日本人を選んだのはよほど黛の実力を買ったからに違いない。

 『天地創造』
『トラ!トラ!トラ!』 1970
佐藤昌道、姫田真左久、古谷伸(チャールズ・F・ウィーラー) アカデミー賞撮影賞ノミネート
村木与四郎、川島泰造(アメリカ人スタッフも)同美術賞ノミネート
井上親弥(アメリカ人スタッフも)同編集賞ノミネート。

 『トラ!トラ!トラ!』

この映画の製作にまつわる数々の苦労話は『トラ!トラ!トラ!』の項と右の本をご参照ください。

黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて

『サンダカン八番娼館 望郷』1975
熊井啓監督
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。
主演の田中絹代はベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞。これが最後の映画出演となった。共演の栗原小巻、高橋洋子も完璧な演技。これを観て泣かない人はもはや鬼だろう。

 『サンダカン八番娼館 望郷』
『海と毒薬』1987
熊井啓監督
ベルリン映画祭銀熊賞

遠藤周作の原作。戦時中九州大学医学部で行われたアメリカ兵捕虜を使った生体解剖を題材にした作品。リアリズムを追求した作品で、スタッフの献血によって本物の血が使われた(白黒映画なのにねえ)。奥田瑛二のベストアクトであり、渡辺謙の出世作。
海と毒薬 デラックス版

『千利休 本覺坊遺文』1989
熊井啓監督
ベネチア映画祭銀獅子賞

勅使河原宏監督の『利休』とほぼ同時期に作られた。井上靖原作で利休役は三船敏郎奥田瑛二、萬屋錦之介、芦田伸介、東野英治郎ら名優が総出演したミステリー仕立ての時代劇。
千利休 本覚坊遺文 『日本の黒い夏-冤罪』2001
熊井啓監督 
ベルリン映画祭特別功労賞(ベルリナーレ・カメラ賞)
熊井監督は2007年5月23日死去。この人のように「日本の闇」に目を向ける監督ももういなくなってしまった。いや、製作者側も観客もいなくなったということなのだが…。せめて自主映画で熊井監督の精神を受け継ぐ人がもっと出てくることを切に望みます。
『ビルマの竪琴』1956
市川崑監督
ベネチア映画祭サンジョルジュ賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

『埴生の宿』を聞くとこの映画を思い出す。 チャコちゃんのお父さん安井昌二が水島上等兵役、三國連太郎らが出演。市川は80年代に中井貴一、石坂浩二でセルフリメイク(『ビルマの竪琴』)している。

 『ビルマの竪琴』
『鍵』1960
市川崑監督、京マチ子仲代達矢主演。
カンヌ映画祭審査員特別賞ゴールデン・グローブ外国映画賞受賞。

谷崎潤一郎の原作はもちろん日本文学史に残る傑作だが、ほとんどポルノ。映画はさすがに気品があるが。
『東京オリンピック』1965
市川崑監督 
モスクワ映画祭スポーツ連盟賞/カンヌ映画祭青少年向け最優秀映画賞 アベベのシーンなど息を飲むほど美しく描かれている大傑作だ。

 『東京オリンピック』

余談だが、当初これは黒澤明が撮る予定で、黒澤は1960年のローマオリンピックを取材までして精力的に準備をしていた。閉会式ではスピーカ内臓の気球を多数飛ばし、ベートーベンの『歓喜の歌』を会場に響かせるという壮大な計画があった。しかし組織委員会の予算の10倍以上(見積額5億9000万円!)かかることが分かり、黒澤は降りざるを得なくなった。幻の『クロサワのドキュメンタリー』である。

市川崑監督2000
ベルリン映画祭ベルリナーレ・カメラ賞受賞(特別功労賞)
全くジャンルを問わず作品を水準以上のものにしてしまう。特に優れているのは編集技術で、テレビドラマ、時代劇、CMなどでも活躍した。あの『子猫物語』を編集でちゃんとした「映画」に仕立て直したのは業界では有名な話。90歳を越えてなお活躍した。文化功労者。

 Kon Ichikawa Interview
『愛の亡霊』 1978
大島渚監督
カンヌ映画祭監督賞

『愛のコリーダ』同様、アナトール・ドーマンのプロデュースによる日仏合作映画。藤竜也、田村高廣、吉行和子が主演。こちらは中村糸子の『車屋儀三郎事件』を原作にしたホラーだが、撮影・美術などが素晴らしい。特に人力車の車がひとりでに回るシーンなどゾクゾクさせられた。
大島渚監督は古くから『絞死刑』、『少年』、『東京戦争戦後秘話』、『儀式』、『夏の妹』などカンヌやベネチアに招待され国際的に知られているが、意外に大きな賞はあまり受賞していない。だが、『愛のコリーダ』1976以降は『愛の亡霊』、『戦場のメリークリスマス』、『マックス、モン・アムール』、『御法度』と世界に配給され、世界で評価されている。2001年にはフランス芸術文化勲章(オフィシエ)を受章した。

 Gohatto trailer - Movie by Nagisa Oshima
『近松門左衛門 鑓の権三』1986
篠田正浩監督
ベルリン映画祭銀熊賞

近松門左衛門の世話浄瑠璃『鑓の権三重帷子』を郷ひろみ主演で映画化した作品で、作家の富岡多恵子が脚色。粟津潔の美術、宮川一夫の撮影、武満徹の音楽など超一流のスタッフが参加。篠田の妻岩下志麻も出演しているが、志麻の父岩下清がプロデューサーをしている。
鑓の権三 篠田正浩監督も意外と海外での受賞作が少ない。が、『心中天網島』、『卑弥呼』、『沈黙』(マーティン・スコセッシ監督がリメイク予定)などは高い評価を受けている。残念ながら引退を表明しているが…。
『楢山節考』1983
今村昌平監督
カンヌ映画祭グランプリ

松竹の大先輩にあたる木下恵介の『楢山節考』はわざと芝居風のセット(美術:伊藤熹朔)を組み、音楽は浄瑠璃で幻想的な雰囲気を出していた。今村は現代風に真正面からリアリティに描いていた。どちらも傑作であり、見比べてみると面白い。

 『楢山節考』
『黒い雨』1989
今村昌平監督 
カンヌ映画祭高等技術委員会賞

過酷なまでのリアリティを求めた今村監督だが、この映画では敢えて特殊な技法を試みたシーンがあり(例えばワンカットの中で舞台のような照明を使うシーンなど)とても意外に思ったが、役者たちの名演を含め完成度は非常に高い。アメリカでの評価が低いのはこの映画のテーマのせいだけだと思いたい。

 『黒い雨』
黒い雨 デジタルニューマスター版
『うなぎ』1999
今村昌平監督 
カンヌ映画祭グランプリ

今村監督はカンヌでパルムドールを2回も受賞した(世界でも5人しかいない)。惜しくも2006年死去。ちなみに僕は今村監督の『ええじゃないか』に出演してるのだ!こちらをご覧ください。


『彼女と彼』
『にっぽん昆虫記』
1964
左幸子
ベルリン映画祭女優賞

飢餓海峡』の名演も忘れがたいですね。映画監督羽仁進の元妻だった。2001年死去。
にっぽん昆虫記
『HANA−BI』1997
北野武監督 
ベネチア映画祭金獅子賞

この年の映画界はキタノ一色だった記憶があるが、これまでの北野作品の「総仕上げ」作品のような印象があった。静と動の対比、間の取り方、コメディセンス、小道具の使い方など、よく見れば細かい描写が確かに秀逸!

 『HANA−BI』
『座頭市』 2003
北野武監督 
ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞

独特の暴力表現や静謐な青を多用した映像イメージ(キタノブルーと呼ばれる)は世界的な評価を得ている。その他フランスの専門的な映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』誌では北野武が表紙を飾った特集が組まれた。ヨーロッパには『キタニスト』と呼ばれる熱烈なファンがいる。ビートたけしは『戦場のメリークリスマス』など役者としても評価されている。

 
『座頭市』
北野武 2007
監督 
ベネチア映画祭にて北野の作品名『監督・ばんざい!』を使った賞が創設され、北野が第一回の受賞。監督・ばんざい!賞は「現役で、将来にわたって活躍が期待される映画監督」を対象としている。2008年、モスクワ映画祭で特別功労賞を受賞(新藤兼人以来2人目)。
浅野忠信 2003
 
日・タイ合作『地球で最後のふたり』ペンエーグ・ラッタナルアーン監督。ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門男優賞受賞。

主役ジンギスカンを演じた『モンゴル(原題)』はアカデミー賞外国語映画賞にノミネート。北野武『座頭市』でも好演。
本多猪四郎監督
ゴジラシリーズ、『モスラ 』など怪獣映画を中心に広く知られている。
晩年は助監督時代からの親友黒澤明の映画『影武者』『乱』『夢』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』などで演出補佐という特別なポジションに招かれて活躍した。
『夢』に出演したマーチン・スコセッシが大ファンだった。

Akira Kurosawa's Dreams -crows
 Akira Kurosawa's Dreams -crows

円谷英二特撮監督
ゴジラ
シリーズ、『モスラ』など世界的に知られる怪獣映画の大家。カメラマン出身で古くからさまざまな特撮技術を開発した。戦前の日独合作映画『新しき土』では、日本で始めてスクリーンプロセスの技術を使用し、アーノルド・ファンク監督を唸らせたという。

テレビ番組『ウルトラQ』、『ウルトラマン』(監修)などでもこのジャンルで先駆者であった。

 ウルトラQがいっぱいコレクション
『泥の河』1981
小栗康平監督
モスクワ映画祭銀賞
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
浦山桐郎に弟子入り、篠田正浩、山本迪夫、大林宣彦などの助監督を務めた小栗康平の監督デビュー作!当時あまりにも基本にしっかりとした手法に逆に新鮮さを覚えたものだった。加賀まり子の美しさも特筆。
『死の棘』1990
小栗康平監督
カンヌ映画祭審査員特別賞・国際批評家連盟賞

島尾敏雄原作の作品。夫の浮気が原因で家庭が崩壊していく様を描く。「正統派」の小栗が一転して「変化球」を投げたような作品で、凝った構図や一見変わった役者(松坂慶子、岸部一徳の熱演。間違いなく二人のベストアクト!)の演技には最初面食らったが、ぐいぐいと人を惹きつける力があって唸らされた。
『伽椰子のために』1984
小栗康平監督
ジョルジュ・サドゥール賞受賞(日本人初)。

ジョルジュ・サドゥールは著書『世界映画全史(映画評論のバイブル)』などで知られるフランスの有名な映画評論家。在日朝鮮人問題を扱った李恢成の小説『伽椰子のために』が原作。転形劇場の故・太田省吾が脚色した。
原作
伽椰子のために
『眠る男』1996
小栗康平監督
ベルリン国際映画祭では芸術映画連盟賞
モントリオール世界映画祭審査員特別大賞受賞)。

意識不明となって延々と眠る男を巡る物語で、人口200万人到達を記念して、群馬県(監督の出身県)が地方自治体としては初めて製作(全額出資)した劇映画。もちろん群馬県でロケが行われ、役所広司、韓国のスター安聖基、インドネシアのスター、クリスティン・ハキムが主演した。
眠る男
『The Man Who Skied Down Everest』 1975
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞

プロスキーヤー三浦雄一郎のエベレスト滑降を撮影した石原プロ製作による記録映画。アメリカで再編集されて公開された。これもソフト化されていない。因みに三浦雄一郎は後に「世界最高齢でエベレスト登頂をし」ギネスブックに載った。
エベレストを滑った男―冒険に生きる (ちくまプリマーブックス) 『親鸞 白い道』1987
三國連太郎監督 
カンヌ映画祭審査員特別賞

親鸞の研究でも知られる三國は原作、脚本、企画、製作を手がけている。
親鸞 白い道
小津安二郎監督
生誕90年(没後30年)を記念して松竹が作った『小津と語る』1993というドキュメンタリー映画には世界の名だたる映画作家が出演し、小津の映画について話をしている。出演はスタンリー・クワン、アキ・ガウリスキ、リンゼイ・アンダーソン、ポール・シュレーダー、フレール・ドニ、ヴィム・ベンダース、ホウ・シャオシェン。それぞれ小津映画の素晴らしさ、想いを語っていて面白い。ヴェンダースは『東京画』の撮影のとき、厚田カメラマンから小津愛用の徳利をもらったそうで、それをオフィスに宝物として飾っていた。
小津と語る 僕は1995年ロンドンに遊びに行った時、たまたまBBCテレビで映画生誕百周年を記念して『東京物語』を放送していたのを見たが、この時ほど日本人であることを誇りに思ったことはなかった。
小津の映画は『東京物語』が1958年にロンドン国際映画祭でサザーランド賞を受賞し評価されてから世界で注目されるようになった。

 『東京物語』
残念ながら小津安二郎監督はアカデミー賞も4大映画祭などの晴れ晴れしい受賞歴はない。
当時日本の映画界はあまりにも時代劇にこだわり過ぎ、現代劇を国際映画祭に出展しなかったという愚かな方針だったから。そのために小津・成瀬巳喜男木下恵介らが無視されたのは許しがたいことである。が、ともあれ優れた映画は結局いつかは評価される。小津が世界の映画人・ファンから最も尊敬されている映画作家であることは間違い無い。
ファンは高橋治の『絢爛たる影絵』は必読!
小津安二郎監督の作品は淡々とした映像の中に静かにいろいろな葛藤が生まれては消えていく。そのテーマは普遍的な「家族愛」。だから国や民族や宗教や貧富を問わず世界の人々の心を捉えることができる理由であろうが、これは生半可なことで表現できることではない。世界広しといえど映画作家にそのような作風で世界中の人を魅了できる人が何人いるだろう?(その小津監督本人は生涯独身で、老いた母と長く二人暮らしであったことはよく知られている)
『父ありき』の父子が渓流釣りをするシーンで、やがて別れ別れになる父子の心の乱れによって、二人の「投げ」のタイミングが微妙にずれていくというカットは、涙なくして見られない。
吉田喜重監督はじめ世界中の映画監督が嘆息した演出(淡々とした笠智衆の演技!)
 A scene from There Was A Father (1942)
『ニッポン国古屋敷村』
小川紳介監督
1982
ベルリン映画祭国際映画批評家賞

ドイツのレギーナ・ウルバー監督は小川紳介の『1000年刻みの日時計 牧野村物語』の撮影を追ったドキュメンタリー『ハレとケ』を撮っている。
「読本」ニッポン国古屋敷村 (1984年) 『ビザと美徳』1997
クリス・タシマ(日系人)監督
アカデミ−賞短編(実写)賞受賞。日本のシンドラー杉原千畝の物語。クリス・タシマは俳優としても活躍している。
 
『公式命令9066 日本人強制収容所』1985
スティーブン・オカザキ(日系人)監督 
アカデミ−賞長編ドキュメンタリー賞(長編)ノミネート
公式命令9066 日本人強制収容 『収容所の長い日々 日系人と結婚した白人女性』1990
スティーブン・オカザキ監督 
アカデミ−賞短編ドキュメンタリー賞受賞
 
『マッシュルーム・クラブ The Mushroom Club』2005
スティーブン・オカザキ監督 
アカデミ−賞短編ドキュメンタリー賞ノミネート

「マッシュルーム」とはきのこ雲=原爆のこと。オカザキは『はだしのゲン』の作者・中沢啓治らを訪ね、ヒロシマで起きた惨事を告発する。
スティーブン・オカザキ監督は「原爆」をめぐる作品の製作に当たって、今なおアメリカでさまざまな嫌がらせを受けているそうだ。だが創作意欲は衰えることなくさらに『ヒロシマナガサキ』を撮った。まったく頭が下がります。
『サヨナラ』1958
ナンシー梅木 アカデミー賞助演女優賞受賞

映画の詳細は「日本が主役編」で。
『ラスト・エンペラー』1988
坂本龍一 
アカデミー賞オリジナル作曲賞

共同製作のデビッド・バーン、スー・ソンとともに受賞した。


『シェルタリング・スカイ』
1990ではゴールデングローブ賞などを受賞。
『ドラキュラ』1993
石岡瑛子
アカデミー衣裳デザイン賞

コッポラ監督作品でブラム・ストーカーの原作を忠実に映画化した。ゲイリー・オールドマン、ウィノナ・ライダー、アンソニー・ホプキンス、キアヌ・リーヴスと出演陣も豪華。
『砲艦サンパブロ』1966
マコ・イワマツ
アカデミ−助演男優ノミネート

この時の受賞は『恋人よ帰れ!わが胸に』のウォルター・マッソーだった。それにしても彼以後、渡辺謙まで日本人俳優はアカデミー賞とは縁がなかったことを考えると、彼の偉大さが分かる。しかも彼の本格的映画デビュー作だったのだ!列強が支配する上海が舞台で、日本人も少し登場するが、マコは中国人の船員を演じていた。僕はこの映画が大好きで(暗い…)、五回ぐらい見ているが、マコが死ぬシーンはショッキングで何度見ても泣いてしまう。マックイーンはじめ出演陣も豪華で名演。ロバート・ワイズ監督はどうしてもミュージカルやSFで注目を浴びるが、こういった骨太の作品でも素晴らしい業績を残している。未見の人はぜひ見て欲しい。
『ラスト・サムライ』2004
渡辺謙 
アカデミ−助演男優ノミネート。

マコ・イワマツ以来の快挙。
『華の愛−遊園驚夢(ゆうえんきょうむ)』2001
宮沢りえ モスクワ映画祭主演女優賞

映画はいにしえの水の都、蘇州を舞台に滅びゆく貴族文化と押し寄せる時代の波に翻弄されるふたりの女性の絆を描いた物語で、ジョイ・ウォン、ダニエル・ウーらが共演、ヨン・ファン監督による香港映画。モスクワ国際映画祭では国際批評家連盟賞を受賞した。
華の愛 遊園驚夢
『萌の朱雀』1997
河瀬直美(一時仙頭直美) 
カンヌ映画祭カメラドール(新人映画監督賞)

恐ろしく退屈な映画だと思うが…。
『殯(もがり)の森』 日仏合作 2007
河瀬直美監督 
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

第60回カンヌ国際映画祭で久々の快挙!
『手をつなぐ子ら』1965
羽仁進監督 
モスクワ映画祭審査員特別賞

知的障害をもつ児童たちを教育する現場を描く感動作。田村一二原作で伊丹万作脚本で稲垣浩が一度映画化をしている。
手をつなぐ子ら (北大路選書) 『MISHIMA』1985
カンヌ映画祭芸術効果賞

緒形拳主演。
作家三島由紀夫の生涯を描くハリウッド作品。
『無能の人』 1991
竹中直人監督 

ベネチア映画祭国際映画批評家連盟賞

僕の大好きなつげ義春の漫画が原作。川原で石を売る落ちこぼれた男が主人公で、もともと映画マニアの竹中は自ら主演しながらも堂々たる演出ぶりを見せた。
『EUREKA(ユリイカ)』 2000
青山真治監督 
カンヌ映画祭国際批評家連盟賞、エキュメニック(世界キリスト教賞:人権問題に関わる優れた作品に与えられるキリスト教団体からの賞)賞受賞

…お願いだからバスを降りて話を展開してくれえ。
『M/OTHER』 1999
諏訪敦彦(すわのぶひろ)
カンヌ映画祭国際批評家連盟賞

子供を預かることになった自由な同棲生活を送るカップルの揺れ動く心情を、即興的演技で描いたドラマ。三浦友和主演。諏訪敦彦はプロデューサーやテレビドキュメンタリー作家としても活躍。現在東京造形大学の学長でもある。
M/OTHER 『NAGISA』 2001
小沼勝監督 
ベルリン映画祭児童映画部門グランプリ

12歳の少女が体験したひと夏の出来事を描く。原作は『六三四の剣』『龍-RON-』で知られる漫画家村上もとかの漫画。監督は日活映画(にっかつ時代も)で活躍したベテラン。現在もVシネマ『雀鬼』シリーズなどで活躍。
『回路』2001
黒沢清監督。
カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞

役所広司、加藤晴彦、麻生久美子、小雪らが出演。インターネットを通じて広がる恐怖を描くホラーで、『CURE』とともに黒沢の代表作のひとつ。ハリウッドでリメイクされ『Pulse』となった。
『独立少年合唱団』 2000
緒方明監督 
ベルリン映画祭アルフレート・バウアー賞(新人監督賞)受賞

1970年代の全寮制中学を舞台に、合唱に情熱を燃やす少年たちを描く青春ドラマでWOWOWの製作。伊藤淳史、香川照之國村隼岡本喜八らが出演している。緒方はテレビのドキュメンタリー畑出身で「40歳の新人」だった。
独立少年合唱団
『ジャングル大帝』1967
ベネチア映画祭サンマルコ銀獅子賞受賞

もちろん手塚治虫原作。山本暎一監督。山本は虫プロ創設時から手塚の右腕としてテレビ『ジャングル大帝』『鉄腕アトム』シリーズや劇場用アニメの脚本・演出に関わった。
冨田勲が音楽を担当。
ジャングル大帝【劇場版】 『六月の蛇』 2002
塚本晋也監督
ベネチア映画祭コントロ・コレンテ部門 審査員特別賞受賞

コントロ・コレンテ(アップストリーム)賞は2002年に新設された部門で本選とは審査員などが別。見知らぬ男からの脅迫をきっかけに、秘めた欲望を露わにしていく人妻の姿を描くエロティック・サスペンス。コラムニストの神足裕司が主演し、いい味を出している。
六月の蛇
『千と千尋の神隠し』2001
宮崎駿監督 
ベルリン映画祭金熊賞!アニメで初のグランプリという快挙!
2002ニューヨーク映画批評家協会最優秀アニメ賞、ボストン映画批評家協会監督特別賞、ロサンゼルス映画批評家協会アニメ賞、全米映画批評会議アニメ賞。米アカデミー賞長篇アニメ賞受賞。

日本映画では何と『 宮本武蔵 』1955以来です!受賞式の一番最初に発表された賞で、キャメロン・ディアスが発表してました。イラク戦争中ということもあって授賞式には監督はじめ誰も出席していなかったのが残念。なお、同年3月28日から全米でおよそ800館で上映された。
『ハウルの動く城』2004
宮崎駿監督 
アカデミー賞 2005年長編アニメ賞ノミネート。

ベネチア国際映画祭オゼッラ・ドゥオロ賞(スタジオジブリに対して)、このほかニューヨーク批評家協会賞 アニメーション賞、ロサンゼルス批評家協会賞音楽賞(久石譲)受賞。
『頭山(あたまやま)』MT. HEAD 2002
山村浩二監督
アカデミー賞短編アニメ部門でノミネートされ注目を集めた。平成14年度(第6回)文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・優秀賞、オランダ・アニメーション映画祭審査員特別賞授賞などの他、オタワ、広島などの国際アニメフェスで招待上映されている。
さくらんぼを食べた男の頭から桜の木が生えて来るという、有名な落語に題材を取った10分の子ども向けの作品。とても素朴な感じの絵柄で好感が持てる。
ニュー・アニメーション・アニメーションシリーズ 山村浩二作品集 『たそがれ清兵衛』2003
山田洋次監督 
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

ノミネートは1981年の小栗康平監督『泥の河』以来久々。藤沢周平原作で山田監督が初めて取り組んだ本格的な時代劇で、細やかな心理描写と小道具などディテールにこだわった美術、撮影はさすがの一言!真田広之宮沢りえが主演だが、前衛舞踏家の田中泯がまた素晴らしい演技を見せた。音楽は冨田勲
『blue』2002
安藤尋監督作。市川実日子 
モスクワ映画祭主演女優賞受賞

宮沢りえに続き、日本人女優が2年連続して受賞する結果となった。この映画、原作の漫画家魚喃キリコが新潟出身で、2001年の夏に新潟市などでロケが行われた。僕が教えていた専門学校の学生も数人がエキストラで出演している。
『誰も知らない』2004
是枝裕和監督 
主演の柳楽優弥がカンヌ映画祭最優秀男優賞を史上最年少(14歳)で受賞した。もちろん日本人としても初受賞である。今後の活躍を期待したい。
『ホテル ビーナス』2004
タカハタ秀太監督 チョナンカンこと草g剛が得意な韓国語で演じる。
モスクワ映画祭パースペクティブ・コンペティション部門最優秀作品賞
『硫黄島からの手紙』
アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞(アイリス・ヤマシタ)ノミネート。音響編集賞受賞。
バベル
菊地凛子 
アカデミー賞助演女優賞ノミネート。このほかゴールデン・グローブ助演女優賞、放送映画批評家協会賞助演女優賞にもノミネートされた。
『もしも昨日が選べたら』
辻一弘
(ビル・コルソ共同)アカデミー賞メイクアップ賞ノミネート。
『長い散歩』
俳優奥田瑛二の監督第3作『長い散歩』が第30回モントリオール映画祭でグランプリを獲得。批評家賞、エキュメニック賞も受賞した。

公式サイト http://www.eiga.com/official/nagaisanpo/
奥田瑛二のブログ「瑛二独断」 http://eijidokudan.blogzine.jp/
『選挙 CAMPAIGN』2007
想田和弘監督
2007年ベルリン映画祭の招待作品。賞を受賞したわけではないが、日本の選挙風景(川崎市議会議員補欠選挙)を描いたこのドキュメンタリーはもの凄い反響を呼んだ。日本人には当たり前の選挙は外国では相当奇異に映る。監督の着眼点に大感心です。
想田和弘監督は短編映画『ザ・フリッカー』で1997年べネチア国際映画祭銀獅子賞にノミネートされた。
公式サイトは以下。
http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
『愛の予感』2007
小林政広監督・脚本
第60回ロカルノ国際映画祭で最高賞である金豹賞グランプリ。CICA賞(国際芸術映画評議連盟賞)、ヤング審査員賞、ダニエル・シュミット賞も同時受賞、4冠を達成した。日本映画の金豹賞グランプリ受賞は、実相寺昭雄監督の『無常』以来37年ぶり。
公式サイトは以下
http://www.ainoyokan.com/
『絵の中のぼくの村 Village of Dreams』1996
東陽一監督
ベルリン映画祭金熊賞銀熊賞受賞。
絵本作家・田島征三の自伝的エッセイを映画化。
絵の中のぼくの村
『パーク・アンド・ラブホテル』2007
熊坂出監督
第58回ベルリン国際映画祭最優秀新人作品賞(出品部門を問わず優れた長編デビュー作に贈られる賞で、2006年に新設。日本人の受賞は初。)

『パーク・アンド・ラブホテル』はフォーラム部門に出品され、ラブホテルの屋上に作られた公園に集まる孤独な人々の交流を描く。りりィ、ちはるが主演。 公式サイトは以下
公式サイト
  『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』2007
若松孝二監督
第58回ベルリン映画祭最優秀アジア監督賞、国際芸術映画評論連盟賞受賞。

若松孝二が企画・製作も担当。かつて1965年に日本映画連盟が『兵隊やくざ』など2作を予選に出したが落選、しかし、日本映画を上映したかった映画祭サイドはピンク映画である『壁の中の秘事』(若松孝二監督作品)を選出し上映したところ、日本映画連盟や日本の評論家が「国辱」と問題視するなど騒ぎとなった。因縁の映画祭で若松監督がやっと評価を得た!
公式サイト

若松監督は自宅兼事務所を抵当に入れ製作費を捻出、自らの山荘をあさま山荘に見立て破壊してまで撮影を敢行。映画に対する情熱・執念には頭が下がります。
『おくりびと(英題:Departures)』2008
滝田洋二郎監督
第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞

外国語映画賞は1951年・黒澤明『羅生門』、1954年・衣笠貞之助『地獄門』、1955年・稲垣浩『宮本武蔵』と受賞しているがすべて名誉賞扱い(しかも全部時代劇)だったのでこれは大変な快挙!2008年夏には第32回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞など海外でも高く評価されている。主演の本木雅弘、広末涼子もいいが久しぶりに見た峰岸徹がよかったのだがこの映画の公開の最中に本当に死んでしまったのが残念。公式サイトは以下
公式サイト
『つみきのいえ(仏題:La Maison en Petits Cubes)』2007
加藤久仁生監督
第81回アカデミー賞短編アニメーション賞受賞

こちらもアヌシー国際アニメーション映画祭で短編部門の最高賞のクリスタル賞を受賞するなど高い評価を得ていた作品。監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』の映像製作会社ロボットの社員で、アカデミー賞受賞式のスピーチで「ドモアリガトミスターロボット」とスピーチして会場が大いに湧いた。
公式サイト
寺島しのぶ 2010
若松孝二監督の映画『キャタピラー』で、第60回ベルリン国際映画祭・最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。左幸子田中絹代に次ぎ、35年ぶりの快挙!因みに僕は彼女に会ったことがある。1983年のことだが、東京のスーパーで新人研修中、お客様の荷物を駐車場まで運ぶことになったのだが、そのお客が何と藤純子(富司純子)で「わ〜本物の藤純子だ!」と見とれながら車までお供した。その時、一緒だったのがまだ小学生だった「しのぶちゃん」だった。まさかこんな大物女優になるとは!
公式サイト
山田洋次
第60回ベルリン国際映画祭の閉幕作品として山田洋次監督の最新作『おとうと』が上映され、山田監督は特別功労賞「ベルリナーレ・カメラ」を受賞。因みに僕は山田監督とも会ったことがある。松竹本社のエレベーターで偶然一緒になっただけだけど。
日本の技術に対しては

キャノン1972
向井二郎、広瀬隆昌 アカデミ−賞科学技術賞(クラスIII)受賞 映画撮影用マクロ・ズーム・レンズの開発に。

キャノン1975
鈴川博(米人スタッフも多数) アカデミ−賞科学技術賞(クラスIII)受賞 映画撮影用超高速レンズの設計と開発に。

シネファイ・インターナショナル1978
アカデミ−賞科学技術賞(技術業績賞)受賞  関口喜一 ドライブインシアター用シネファイ・オーディオ・ラジオ・サウンド・システムの開発に。

富士フィルム1981
アカデミ−賞科学技術賞(アカデミー功績賞) 高感度フィルムA250が受賞。

パナビジョン1990
宮城島卓夫(日系人) アカデミ−賞科学技術賞(技術業績賞)受賞
宮城島は2004年にはさらに
ゴードン・E・ソーヤー賞受賞(科学技術賞の名誉賞) パナビジョン社の創設メンバーとして映画用レンズの開発に 半世紀にわたり貢献した功績に対して。

ニコン2001
藤江大二郎 アカデミ−賞科学技術賞受賞 65/35 マルチフォーマットオプチカルプリンター開発に対して
 
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